『ディジタル画像処理 改訂第二版』は基礎から学べるおすすめの入門書

Modified: | Tags: 本・書籍, 画像処理

OpenCVなどのライブラリを使えばとりあえず画像を処理することはできる。細かいアルゴリズムを知らなくても適当にWebを検索してサンプルコードをコピペすれば誰でもできる。

それはそれで構わないが、もしもよく分からないままライブラリの力に頼っていることに不安を感じているのなら、ぜひ手元に置いておいてほしい本を紹介したい。

CG-ARTS(画像情報教育振興協会)の『ディジタル画像処理[改訂第二版]』。

ディジタル画像処理[改訂第二版]
ディジタル画像処理編集委員会
画像情報教育振興協会 (2020-02-26)

注意点と良い点を紹介する

  • 目次・内容
  • 注意点 / こんな人にはオススメできない
    • ソースコードは一切ない
    • サルでもわかる的なものではない
    • Kindle版は固定レイアウト
  • 良い点 / こんな人にオススメしたい
    • フルカラー
    • 幅広い内容と丁寧な解説
  • まとめ

目次・内容

目次は以下の通り。

画像処理にまつわる基礎的な知識から具体的なアルゴリズムや応用事例の紹介まで幅広くカバーされている。章のタイトルを見るだけでもその範囲の広さが分かるだろう。

  1. イントロダクション
  2. ディジタル画像の撮影
  3. 画像の性質と色空間
  4. 画素ごとの濃淡変換
  5. 領域に基づく濃淡変換(空間フィルタリング)
  6. 周波数領域におけるフィルタリング
  7. 画像の復元と生成
  8. 幾何学的変換
  9. 2値画像処理
  10. 領域処理
  11. パターン・図形・特徴の検出とマッチング
  12. パターン認識
  13. 深層学習による画像認識と生成
  14. 動画像処理
  15. 画像からの3次元復元
  16. 光学的解析とシーンの復元
  17. 画像符号化

『ディジタル画像処理[改訂第二版]』は2020年2月の発売で、2015年3月発売の『ディジタル画像処理[改訂新版]』の改訂版。

旧版(『改訂新版』)を持っている人が買い直すほど大幅に更新されているわけではないが、新しく買うのなら当然『改訂第二版』のほうがいいだろう。

より詳しい目次や旧版からの改訂内容は公式サイトのPDFで紹介されている。サンプルページもあり。

注意点 / こんな人にはオススメできない

ソースコードは一切ない

あくまでも画像処理そのものについて解説された本で、プログラミングの本ではない。アルゴリズムをプログラムでどう実現するかは書かれていない。

コードを写経して実行しつつ勉強したい、という人は買ってはいけない。

サルでもわかる的なものではない

この記事のタイトルには「入門書」と書いたが、サルでもわかる、雰囲気でなんとなく分かった気になるというような本ではない。

数式もたくさん出てくる。イメージ図も多いので数式を100%理解しないといけないというわけではないが、数式なんて見るのもイヤ、という人には向いていないだろう。

Kindle版は固定レイアウト

Kindle版もあるが、残念ながら固定レイアウト。固定レイアウトで検索できない電子書籍は使いにくいだけなので紙の本のほうがオススメ。索引を見つつページをめくるほうが格段に検索性が高い。

どうしてもKindle版のほうがいいという人も購入前に無料サンプルの試し読みで使い心地を確認してみることをおすすめする。

良い点 / こんな人にオススメしたい

フルカラー

400ページを超えるボリュームだが、最初から最後まで全ページフルカラー。

画像処理を学ぶ上でこれは重要。色についての説明は当然カラーのほうがいいし、処理前後の画像や図解も色付きのほうが格段に分かりやすい。

「カラー画像は口絵を参照」みたいな本も多いなか、全ページフルカラーなのは素晴らしい。これで4290円というのはむしろ安いと思う。

幅広い内容と丁寧な解説

目次を見れば分かるように画像処理にまつわる基本的な内容はほぼ網羅されている。

網羅的な本というと各トピックの説明が簡単すぎて結局他の本を読まないと理解できないというようなことが多いが、本書は解説も丁寧。簡潔ながら過不足なく説明されている。

用語に英語が併記されているのもいい。専門用語は日本語と英語の対応が分からなくて困ることが往々にしてあるが、この本があれば大丈夫。用語集としても便利。

もちろんもっと詳しく知りたい、説明が足りないという部分もあるだろうし、これさえあれば他の本は一切いらないというわけではないが、画像処理全般を理解したい、困ったときに調べられるリファレンスが欲しいという用途にはうってつけだろう。

まとめ

進化し続ける画像処理の世界だが、基礎を押さえておくと最先端の内容も理解しやすくなるし、ディープラーニングにしろ何にしろ前処理の段階では古典的な画像処理の知識があったほうがいい。

OpenCVなどのライブラリを利用するときも、アルゴリズムを少しでも理解しておくと、どの関数を使うべきか、引数はどう設定すればいいのか見当がつきやすい。

基礎は陳腐化することもないので末永く役に立つ本だと思う。おすすめです。

ディジタル画像処理[改訂第二版]
ディジタル画像処理編集委員会
画像情報教育振興協会 (2020-02-26)

関連カテゴリー

関連記事